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『飽きたの三吉』

  むがしむがし、ある処に、
  爺さまど婆さまいでよ、一人息子どご、それはそれは大事に育ででいだっけど。
「こがいにめんごい息子ぁいで、おらんだは幸せ者だなぁ・・・」
なて語ってだっけど。
んで、その大事な息子ぁ、年ど共に立派な若者になったっけど。
  爺さまも婆さまも、目さいっちぇもいったぐねぇ息子の成長に、目を細めでよろごんでだったそうだ。
  ほだげんどもな、あんまり我が儘に育でだもんだがら、何してもすぐに飽ぎでしまうんだど。
  爺さまも婆さまも、何とがしんなね、ど思って、今度はこの仕事、今度はあの仕事って世話してけっちぇも、又飽ぎでしまってよは、なじょしても長続ぎしねごんだど。
  そうして、とうとう、しんしょ(財産)ねぐしてしまったけど。
  ほだがらなぁ、子供のころがらある程度の躾じゃしんなねもんだそうだ。
  どがいに辛い仕事でも、飽ぎだだのやんだだのど言わねで、一生懸命働がねど、
  人じゃあ駄目になって、どん底さ落ぢでしまうがら、

【飽ぎだの三吉むがえさ来た】

などど言わんにぇようにしんなねんだど。

  とーびんと。

山形弁訳

『飽きたの三吉』
 むがしむがし、ある処に、
  爺さまと婆さまがいて、一人息子を、それはそれは大事に育てていたんだと。
「こんなにかわいい息子が居て、おれ達は幸せ者だなぁ・・・」
なんて、語っていたんだと。
そして、その大事な息子ぁ、年と共に立派な若者になったんだと。
  爺さまも婆さまも、目に入れても痛くない息子の成長に、目を細めて喜んでいたそうな。
  だけどな、あまりに我が儘に育てたものだから、何をしてもすぐに飽きてしまうんだと。
  爺さまも婆さまも、何とかしなきゃならない、と思って、今度はこの仕事、今度はあの仕事って世話してあげても、又飽きてしまって、どうしても長続きしないんだと。
  そして、とうとう、財産をなくしてしまったんだと。
  だからな、子供のころからある程度の躾はしなきゃならないものなんだそうだ。
  どんなに辛い仕事でも、飽きたの嫌だだのと言わないで、一生懸命働かないと、
  人は駄目になって、どん底に落ちてしまう。

【飽きたの三吉が迎えに来た】

などと言われないようにしなきゃならないんだと。
とーびんと。