『飴買い幽霊』
ある茶店さ、白い着物きた若い女が一文持(た)がって、飴買いさくんなだど。
「こがえな若い女が一文持って、飴買いさ来るなて、おかしいなぁ、飴買いに来んなだず、おがしいもんだなぁ」
なて、じいさんは不思議に思っていだど。
ほうして、今日も、次の日も、また、
「一文がな、呉(け)っでおくやい」
また次の日も、
「一文がな、呉っでおくやい」
て、ほうして六日続げだが、
「はて、おがしいもんだな、何か、かいつぁどっから来んだかなぁ」
そこで、じいさん、若い女の後追っかげで行って見たらば、
ずっと行ぐけぁ、お寺の裏の卵塔(墓)さ入って行ったど。
どさ行んかなと思ったらば、このあいだ荼毘あった新しい仏さまどこで、
すうっと居ねぐなった。そうしたらばよ、
「なぁ、今日で飴買う銭、ねぐなったぜばぁ、明日から買って食(か)せらんねしなぁ。ほに、困ったもんだなぁ、はぁて、むごさいごどなぁ」
て、泣き声すんなだずも。
「はてなぁ、奇態なもんだごでなぁ」
じいさん、わらわら来て、村の庄屋さ来て、
「庄屋さま、庄屋さま、いや、昨夜、こういう訳で、毎日飴買いさ来んの居で、今日で六日目なもんだから、奇態なもんだと思って、おれ、卵塔まで追っかけで行ったらばよ、あの新しい荼毘塚がらよ、そういう声聞こえんなよ」
「ああ、ほだ、あそこはどこそこの家で、お産する間際の女死んだなだからな、んだげど、そいつぁ奇態なもんだ。掘ってみんなねべなぁ」
て、庄屋さんは役人さお話して、そこの新墓地を掘ってみだてよ。
そうしたらば、中なら赤子の音、アンアンてする。
棺の蓋開げでみだらば、大きな男子生まっで居で、
アーンアーンていだっけ。
んだから、大けな腹した女死んだ時など、気ぃ付けんなねもんだど。
死んでから子供生まれっとわりがら・・・。
どーびんと。