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『あやちゅうちゅう』

 昔、ある時、ずんつぁが山で昼休みしったけど。
  ほうしたえば、どこがらがきれいな鳥飛んできて、
「あやちゅうちゅう錦さらさら、御用のお宝、つつら、ツン、プン、パイ、ピーヒョロヒョロヒョロー」
て鳴いだけど、ずんつぁは、
「なえだてきれいな声で鳴ぐごどなぁ。ほんじゃ、こごさきて鳴いでみろ」
て、手出したえば、ずんつぁの手のひらさ来て、
「あやちゅうちゅう・・・・・・」
て鳴いだけど。
「ほんじゃ、頭の上で鳴いでみろ」
て言ったえば、頭の上で、
「あやちゅうちゅう・・・・・・」
て鳴いだけど。
  ずんつぁは、うれすぐなって、
「ほんじゃ、ベロ(舌)の上で鳴いでみろ」
てベロ出したえば、鳥は本当にベロの上で鳴いだけど。
ずんつぁはうれすくて、ヒョイとベロを動かしたえば、
間違ってヒョイと鳥ば飲んでやってしまったんだど。
  ずんつぁは、さあさあさあさあ、こりゃわりごどした。
て思って腹ば、そうーっと撫ででみだど。
ほうしたえば、腹の中がら、
「あやちゅうちゅう、錦さらさら、御用のお宝・・・・・・」
て鳴ぐっけど。ずんつぁは、家さ帰って、ばんちゃの前で腹撫でだえば、
「あやちゅうちゅう、錦さらさら、御用のお宝・・・・・・」
て鳴いだけど。ばんちゃは、
「おやおやおや、めずらしいごどなぁ、ほだ、屁っぴりずんずになって行って、お城の殿様さ聞かしえっといいんねべが」
て言ったど。ずんつぁはお城の回りさ行って、
「屁っぴりずんず、が参りました。ゝゝ」
て言って歩いだど。ほうしたえば城の中さも聞こえで、
家来は、
「おやおや屁っぴりずんずどは珍しい、どだなだが殿様さ聞かしぇでみんべ」
なて言って、ずんつぁば殿様の前さしぇで行ったど。
  家来は、
「ほんじゃ、どだな屁だが殿様の前でたっちぇみろ」
て言ったど、ずんつぁは、しゃがんで、そうっと腹撫でだど、ほうしたえば、
「あやちゅうちゅう錦さらさら、御用のお宝、つつら、ツン、プン、パイ、ピーヒョロヒョロヒョロー」
て鳴いだけど。殿様は、
「なえだて、めずらすぇ屁だごど。もう一ぺん聞かしぇろ」
て言うもんだから、ずんつぁは、又腹撫でだど、ほうしたえば、又、
「あやちゅうちゅう、錦さらさら、御用のお宝・・・・・・」
て鳴いだど。殿様はすっかり感心して、金銀などいっぱい、ほうびくれだっけど。
  ずんつぁは、ほうび貰って家さ帰って、ばんちゃさ見しぇったけど、ほうしたえば、そごさ、隣のばんちゃが入ってきて、
「おやおや、すばらすい宝だごどー。何したなや」
て聞いだど。ずんつぁは、
「屁っぴりずんずになって行って、殿様からもらって来たんだ」
て教しぇだけど。欲張りな隣のばんちゃは、
「おらえのずずもやんなね」
なて、わらわら家さ帰って行ったど。
  隣のばんちゃは、家さ帰っと、さっそぐ芋だの、にんにくだのいろいろ屁の出やすい食い物ば、ずんつぁさ食しぇで、お城んどごさやったど。隣のずんつぁは、
「屁っぴりずんずが参りましたぁ。ゝゝ」
て言ったけど。ほうしたえば、お城の家来は、
「今日はなえだて珍すい日だごど、まだ屁っぴりずんず来た」
なて言って、隣のずんつぁば殿様の前さしぇで行って、
「どだな屁だが、たっちぇみろ」
て言ったど。隣のずんつぁは、殿様の方さ尻向げで、しゃがんで、
「うーん」
て、いっけばっだど。ほうしたえば、
「ブッ」
て臭い屁出だけど。ほうして屁の実(便)まで出ですまったど。回りはみな臭ぐなってすまったど。家来は、
「殿様の前でなんちゅうごどすんなだ」
て言って、隣のずんつぁば、城の外さただぎ出したど。
  隣のずんつぁは、ほうびどころが、さんざんただがっちぇ、血出すながら家さ帰って行ったど。
  隣の家では、ばんちゃ、ずんつぁが、ほうびいっぱいもらって帰ってくんなば、今か今かと。今まで着ったボロ着など投げで、首長ーぐして待っていだけど。
  ほうすっと、遠ぐの方がら、
「うーん、うーん」
なて聞こえでくっけど。隣のばんちゃは、
「ずんつぁは、ほうびいっぱいもらって、赤い着物着て、歌うだいながらくるどごだなぁ」
なて言ってだっけど。だんだん近づいできたえば、ずんつぁは血、まっ赤に出して泣ぎながら帰ってきたんだけど。
  隣のばんちゃは、投げだ着物などまだ拾ってきて着んなねぐなったんだけど。
  とーびんさすけ猿まなぐ、さーるのまなぐさ毛がはえで、めんめんめっこになりました。

山形弁訳

『あやちゅうちゅう』
 昔、ある時、おじいさんが山で昼休みをしていたんだと。
  そうしたら、どこからかきれいな鳥が飛んできて、
「あやちゅうちゅう錦さらさら、御用のお宝、つつら、ツン、プン、パイ、ピーヒョロヒョロヒョロー」
って鳴いたんだと。おじいさんは、
「なんだってきれいな声で鳴くものだなぁ。それじゃ、ここに来て鳴いてみろ」
って手をだしてたら、おじいさんの手のひらに来て、
「あやちゅうちゅう・・・・・・」
って鳴いたんだと。
「それじゃあ、頭の上で鳴いてみろ」
って言ったら、頭の上で、
「あやちゅうちゅう・・・・・・」
って鳴いたんだと。
  おじいさんはうれしくなって、
「それじゃあ、ベロ(舌)の上で鳴いてみろ」
ってベロ出したら、鳥は本当にベロの上で鳴いたんだと。
おじいさんはうれしくて、ヒョイとベロを動かしたら、間違ってヒョイと鳥を飲みこんでしまったんだと。
  おじいさんは、さあさあさあさあ、こりゃぁ悪いことをした。
って思って腹を、そうーっと撫でてみたんだと。
そうしたら、腹の中から、
「あやちゅうちゅう、錦さらさら、御用のお宝・・・・・・」
って鳴いたんだと。おじいさんは、家に帰って、おばあちゃんの前で腹撫でてみたところ、
「あやちゅうちゅう、錦さらさら、御用のお宝・・・・・・」
って鳴いたんだと。おばあちゃんは、
「おやおやおや、めずらしいことなぁ、そうだ、屁っぴりずんずになって行って、お城の殿様に聞かせてあげるといいんではないだろうか」
って言ったんだと。おじいさんはお城の回りに行って、
「屁っぴりずんず、が参りました。ゝゝ」
って言って歩いたんだと。そうしたら城の中にも聞こえて、家来は、
「おやおや屁っぴりずんずとはめずらしい、どんなものか殿様に聞かせて見せよう」
なんて言って、おじいさんを殿様の前に連れて行ったんだと。
  家来は、
「それじゃあ、どんな屁なのか殿様の前で垂れてみろ」
って言ったんだと、おじいさんはしゃがんで、そうっと腹を撫でたそうな、そうしたら、
「あやちゅうちゅう錦さらさら、御用のお宝、つつら、ツン、プン、パイ、ピーヒョロヒョロヒョロー」
て鳴いたんだと。殿様は、
「なんだって、めずらしい屁だな。もう一度聞かせてみろ」
って言うものだから、おじいさんは、又腹を撫でたんだと、そうしたら、又、
「あやちゅうちゅう、錦さらさら、御用のお宝・・・・・・」
って鳴いたと。殿様はすっかり感心して、金銀などいっぱい、褒美をくれたんだと。
  おじいさんは、ほうび貰って家に帰って、おばあちゃんに見せてたんだと、そうしたら、そこに、隣のおばあちゃんが入ってきて、
「おやおや、すばらしい宝だなぁ。どうしたんだい」
って聞いたんだと。おじいさんは、
「屁っぴりずんずになって行って、殿様からもらって来たんだ」
って教えたんだと。欲張りな隣のおばあちゃんは、
「うちのおじいさんもやらなきゃ」
なんて、急いで家に帰っていったんだと。
  隣のおばあちゃんは、家に帰ると、早速芋だの、にんにくだのいろいろ屁の出やすい食い物を、おじいさんに食わせて、お城に行かせたんだと。隣のおじいさんは、
「屁っぴりずんずが参りましたぁ。ゝゝ」
って言ったんだと。そうしたら、お城の家来は、
「今日はなんだって珍しい日だなぁ、また屁っぴりずんずが来た」
なんて言って、隣のおじいさんを殿様の前に連れて行って、
「どんな屁か、垂れてみろ」
って言ったんだと。隣のおじいさんは、殿様の方に尻を向けて、しゃがんで、
「うーん」
て、きばったんだと。そうしたら、
「ブッ」
て、臭い屁出たんだと。そうして屁の実(便)まで出てしまったんだと。回りはみな臭くなってしまったんだと。家来は、
「殿様の前でなんてことをするんだ」
って言って、隣のおじいさんを、城の外に叩き出したんだと。
  隣のおじいさんは、ほうびどころか、さんざん叩かれて、血を出しながら家に帰って行ったんだと。
  隣の家では、おばあちゃん、おじいさんが、ほうびをいっぱいもらって帰ってくるのを、今か今かと。今まで着ていたボロ着など捨てて、首長ーくして待っていたんだと。
  そうすると、遠くの方から、
「うーん、うーん」
って聞こえてきたんだと。隣のおばあちゃんは、
「おじいさんは、ほうびいっぱい貰って、赤い着物着て、歌うたいながらくるとこなんだなぁ」
なんて言ってたんだと。だんだん近づいてきらら、おじいさんは血、まっ赤に出して泣きながら帰ってきたんだと。
  隣のおばあちゃんは、捨てた着物などをまた拾ってきて、着なくちゃならなくなったんだと。
  とーびんさすけ猿まなぐ、さーるのまなぐさ毛がはえて、めんめんめっこになりました。