『馬鹿婿ばなし』
あるどごで婿さんもらったども。
婿さんは親類の家さ、
「お前んどごで初婿もらったな、おら家さよごして呉ろ」
なて言わっで招ばっで行ったんだども。
そして招ばっで行ったらば、
「ああ、婿さん、お前がぁ。いや実はお前さ飲ませっかど思って、梁の上さ、酒作っていだなよ。いま、梁さ上がって酒瓶降ろすがらよ、お前、尻、ぎっとつかんでで呉ろやい。でーんと落すど、ぼっこれっど悪れがら、ぎゅっとつかんでで呉ろよ」
て頼んで、そこの家の親父ぁ、梁の上さ、梯子かけて登って行ったども。
ほうして、仕込んでだなさ、縄かげて、
「ええか、落とすぞ」
て、ずずーッと落としたども。
「ええが、尻押えんなねぞ。尻ぎっちり押さえろよ」
「ああ、押さえっだ、押さえっだ」
下で婿言うもんだから、
「ほら、いまちいとだぞ。いまちいとだ、ちいとだ」
「ほんだら、ええがんべが」
いま少しで届きそうだて、親父、はっと縄放したども。
ほしたらば、瓶がガチャーンと落ぢで割っちぇしまった。
「なえだ。あれほど、あがえに尻押さえでで呉けろよ、て頼んでだのば、なして押さえでで呉ねなんや」
ほしたら婿さんは、
「ほら、さっきから、おれの尻押さえっだぜぇ」
て。
尻間違いだったけど。
どんびんと。