『馬鹿と団子』
あるどこさな、ちいと足んね息子ぁ、ええ娘もらって、三ツ目(結婚から三日目)に
来ておくやいなて言わっで、嫁と息子ぁ招ばっで行ったど。
「いや、婿どのござったから・・・」
なて、そごのおっかさ、一生懸命ご馳走拵(こしゃ)って、ほして団子ていうものご馳走したど。
「うまいもんだな、おっかさ、こいつ何ていうもんや」
「団子ていうもんだ」
小豆まぜだり、黄粉混ぜだりして、その息子食ったごどね、名前もしゃねがったど。
「団子なぁ、団子なぁ」
ほうして御馳走なって、嫁とおっかどこ置いて、自分一人帰ってきたけど。
「えがったなぁ、えがったなぁ」なて。
「いや、おっかよ。御馳走あったけ、御馳走あったけ」
「なに、そがえに御馳走あったけ」
「あいつよ、うまいがった。あいつよ、あいつよ」
ほうして、囲炉裏端さ鉤さがってで─昔それで釜コわかしていだった─
その鉤おさえながら
「ほら、おっか、分んねべがなぁ、あいつだごで」
「何やぁ」
「あいつよ」
なて言う。おっかぁ分んね。
「ほに、分んねもんだなぁ」
ほしたら、息子は鉤ぱっと放したずも。そうしたらば、鉤、こっちゃ引っ張ってだな放したもんだから、
向かい側さ坐ってたおっかの頭さ、ぺーんと当たったもんだ。
「いや、痛い、痛い。団子みたいな瘤出た」
て、おっか言うたず。
「いやいや、その団子だ、団子拵って呉ろ」
と言うたんだけど。
どーびんと。