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『貧乏長者』

  むがしむがし、ある村さ、爺様ど婆様いだっけど。
  爺様ど婆様さは、子供いっぺいだったもんだがら、働いでも働いでも貧乏だったんだど。
  ある日、爺様は村の長者様に呼ばっちぇ、長者様の家さ行ぐごどになったんだど。
  その長者様は村一番のお金持ちだったんだげんど、爺様呼んで御馳走しながら、
「おれも爺様の幸せさあやがりっちぇもんだ」
って言うなだっけど。
  爺様は、
「おれみでなより、長者様みでなお金持ちだったらば、幸せでねぇなてあんめぇ」
て言ったなだど。
  ほしたら、長者様は、
「なに言ってだんや、爺様、爺様は一番宝の健康ど二番宝の子宝どご持ってだした・・、おれなんか三番宝のお金しかねぇでら。んだがら爺様は村一番の幸せ者だ」
その話聞いで、爺様は大喜びで、家さ帰って、婆様さその話したんだど。
  ほして、爺様ど婆様は一番宝と二番宝のお礼云うためにお宮様参りさ出がげだんだど。
  お宮参りさ出がげだ次の日、海さ出だ爺様の舟は大漁で、それだげじゃねぐ、海辺で拾った焚き木割ったら、大判小判がザグザグ出てきたんだど。
  ほだげんど、爺様ど婆様は、
「おらんだは、一番宝ど二番宝持ってだんだがら、三番宝までおらんだのものにはさんにぇべぇ」
って言って、獲っちゃ魚で村の人達さ御馳走して、大判小判どご引出物にして呉っちぇやったんだど。
  それがら爺様ど婆様は、貧乏長者って呼ばれるようになったんだど。
  どーびんと。

山形弁訳

『貧乏長者』
 むかしむかし、ある村に、爺様と婆様がいたっけど。
 爺様と婆様には、子供がたくさんいたものだから、働いても働いても貧乏だったんだと。
 ある日、爺様は村の長者様に呼ばれて、長者様の家に行くことになったんだと。
  その長者様は、村一番のお金持ちだったんだけど、爺様呼んで御馳走しながら、
「私も爺様の幸せにあやかりたいものだ」
って言うのだっけど。
 爺様は、
「私のような者より、長者様のようなお金持ちならば、幸せじゃないなんてことないでしょう」
て言ったのだと。
 そしたら、長者様は、
「なに言ってるの爺様、爺様は一番宝の健康と二番宝の子宝を持ってるじゃないか・・、私なんか三番宝のお金しかないんだから。だから爺様は村一番の幸せ者だ」
その話聞いて、爺様は大喜びで、家に帰って、婆様にその話したんだと。
 そして、爺様と婆様は一番宝と二番宝のお礼を言うためにお宮参りに出かけたんだと。
 お宮参りに出かけた次の日、海に出た爺様の舟は大漁で、それだけじゃなくて、海辺で拾ったたき木を割ったら、大判小判がザクザク出て来たんだと。
 だけれども、爺様と婆様は、
「私たちは、一番宝と二番宝を持っているんだから、三番宝まで私たちのものにするわけにはいかないだろう」
って言って、獲れた魚で村の人たちに御馳走して、大判小判を引き出物にしてあげたんだと。
 それから爺様と婆様は、貧乏長者って呼ばれるようになったんだと。
 どーびんと。