『緋々退治』
むがしむがし、ある村さお侍さま来たっけど。
祭りだじば村の人は悲しそうな顔しったたんだど。
お侍さまは、不思議なごどもあるもんだど思って、村人さ聞いでみだんだど。
ほしたらな、村祭りが来るたんびに、綺麗な娘いだ家さ、白羽の矢立づんだど。
白羽の矢立った家の娘は、祭りの晩に、山の神様さ人身御供どして出されんなだど。
娘のいだ家では、祭り近づいでくっと、どごの家さ白羽の矢立づなだべって、ハラハラしてんなねなだど。
今年は庄屋様の家さ、白羽の矢立ってよ、家中の人が皆んな泣いでんなだ、ど聞いだど。
お侍さまは、
「神様が娘を食うなて、そだなおがしなごどは、ある筈ない」
ど言ったんだと。ほしたら村人が言うには、
「人身御供を出さねど、村は大荒れに荒らさっちぇしまうなだ。んだがら、誰がが村のために犠牲になんなねなよ」
って言うんだっけど。
お侍さまは娘を助けんなね、ど思って考えだど。
ほうして丹波の国の四毛と三毛のつがいの犬つっちぇきて、祭りの夜、白木の箱さ、娘の代わりに、つがいの四毛三毛の大犬入っちぇ、山の神さ納めできたんだど。
ほうしてお侍さまは、
「何がこどが起ぎだら、俺が出る」
と腰の刀さ手かげで、大木の陰さ隠っちぇ見ったったど。
ほうしたら山の方がら、生ぬるーい風吹いできて、誰がが白木の箱持って、お宮の中さ入って行ったっけど。
そして中で酒盛り、はじまったもんだがら、お侍さまは、お宮の外がら、がっちりど鍵かげだんだど。
中では酒盛り続いでで、
「白木の箱あげろ、あげろ」
どいう声聞こえできだもんだがら、隙間がら覗いでみだらば、
白髪の大きな緋々が命令しったんだっけど。
たいそう立派な緋々大将が、子分の緋々さ言い付けで、白木の箱あげだらば、そごさ入ってだった、四毛三毛の大犬が、緋々さとびかがって、退治してけっちゃんだど。
娘どご助けでもらった庄屋様は、知恵ど勇気あるお侍さまさ感謝して、四毛三毛のお宮建でだんだど。
その後、その村は平和な村になったなだど。
とーびんと。