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『蛙とネズミ』

 むがぁし、あるどごさ蛙どネズミいだっけど。
 ほして、ある暖ったげ日に蛙はネズミさ
「おれ、水ん中だったら、どごまでも泳がれんなんだ」
って自慢したんだっけど。
 ネズミは水ん中さなて入ったごどねぇもんだがら、羨ましぐなってはぁ、蛙さ頼んだど。
「蛙さん、おれ今まで水ん中さなて入ったごどねぇなよ。おれも泳いでみっちぇなだげんど、なんとがなんねがぁ」
ほしたら、蛙は、
「しょうがねなぁ、ほんじゃば、一緒に泳いでけっから、おれの足さ尻尾どご、ぎっちりど巻いで、落ぢねようにおれの背中さ乗ってろよ」
って言って、泳ぎさ行ぐごどになったんだど。
 ネズミは蛙に言わっちゃとおり、尻尾どご蛙の足さぎっちりど巻いで、蛙の背中さ乗って泳いだんだど。
 ほして、かなり泳いだもんだがら、ネズミは満足してはぁ、
「もういいべはぁ」
って言ったんだど。
んだげんど、蛙ぁ、まだ泳ぎ自慢しっちゃくて、
「いや、もっと泳いでけっから」
なて、まだ泳ぐんだっけども。
 ほしたら、鷹が水の上のネズミ見つけで、ビューッて落ぢで来たんだど。
ほして、ネズミどごくわえだっけばぁ、尻尾が蛙の足さも巻がっちぇだもんだがら、蛙も一緒に鷹に食わっちぇしまったんだど。
 ほだがらなぁ、あんまり自慢ばりして、いい気になってっとろぐなごどになんねもんだ。
 どーびんと。

山形弁訳

『蛙とネズミ』
 むかし、あるところに蛙とネズミがいたんだと。
 そして、ある暖かい日に蛙はネズミに
「おれ、水の中だったら、どこまででも泳げるんだぞ」
って自慢してたんだと。
 ネズミは水の中になんて入ったことないもんだから、羨ましくなって、蛙に頼んだんだと。
「蛙さん、おれ、今まで水の中になんて入ったことないのよ。おれも泳いでみたいんだけど、なんとかならないかなぁ」
ほしたら、蛙は、
「しょうがないなぁ、それじゃあ、一緒に泳いであげるから、おれの足に尻尾を、ぎっちりと巻いて、落ちないように背中に乗ってるんだぞ」
って言って、泳ぎに行くことになったんだと。
 ネズミは蛙に言われたとおり、尻尾を蛙の足にぎっちりと巻いて、蛙の背中に乗って泳いだんだと。
 そして、かなり泳いだもんだから、ネズミは満足して、
「もう、充分だぁ」
って言ったんだと。
だけど、蛙は、まだ泳ぎを自慢したくて、
「いや、もっと泳いでやるよ」
なんて、まだ泳ぐんだったども。
 ほしたら、鷹が水の上のネズミ見つけて、ビューッて落ちて来たんだと。
そして、ネズミをくわえたら、尻尾が蛙の足にも巻かれているものだから、蛙も一緒に鷹に食われてしまったんだと。
 だからな、あまり自慢ばかりして、いい気になっているとろくなことにならないものだ。
 どーびんと。