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『マムシ小判』

  むがしむがし、神室山のふもどさ、爺さまど婆さま居だったど。
  あるどぎ、二人で山さ出がげだんど。
  ほしたら、急に雨降ってきたもんだがら、おっきいけやきの木の下で雨やどりしたど。
その木の下、なんかピカピカ光るもんだがら、爺さまが木の下の草むらのぞいでみだら、小判ギッシリつまってだ大っきなカメ埋まってだったんだども。
爺さまど婆さま二人じゃ、たががんにぇぐらいあったもんだがら、爺さまど婆さまは村さ帰って、隣の爺さまど婆さまさ今日のごど話して、
「明日朝になったら、みんなで取りさ行って仲良ぐ分げねが」
って言ったんだど。
  ほだげんど、隣の爺さんど婆さんは欲張りだったもんだがら、みんなで分げんな嫌んだくて、
「今晩のうぢにおらんだで掘って来んべ」
って堀りに山さ出がげだんだど。
ほして、けやきの下さ来た隣の爺さまど婆さま、たいまつで草むら照らしてみだら、大っきなカメ埋まってだったど。
んだげんど、そのカメの中さは、とぐろ巻いだマムシが何十匹ど入ってだったんだど。
隣の爺さまは
「あのじじい、だましたな、仕返ししてけんなね」
って大っきなカメ、マムシごど風呂敷さ包んで、ヨッコイショ、ヨッコイショって村まで帰ったんだど。
ほして、爺さまど婆さまの家の前で、風呂敷さ入ってだカメ、マムシごど家の中さ投げで、わらわらて家さ帰ったんだど。
  朝になって、爺さまど婆さま目覚ましたら、枕元さ昨日のカメ転がってで、中がらピカピカ光る小判が部屋中さ転がってだったんだど。  どーびんと。

山形弁訳

『マムシ小判』
  むかし、神室山の麓に爺さまと婆さまがいたんだと。
  あるとき、二人で山に出かけたんだと。
そしたら急に雨が降ってきたものだから、大きいけやきの木の下で雨やどりをしたと。
  その木の下、なんかピカピカ光るものだから、爺さまが木の下の草むらを覗いてみたら、小判がギッシリと詰まった大きなカメが埋まっていたんだども。
爺さまと婆さま二人じゃ持てないくらいあったものだから、爺さまと婆さまは村に持って帰って、隣の爺さまと婆さまに今日のことを話して、
「明日の朝になったら皆で取りに行って仲良く分けないか」
って言ったんだと。
 けれども、隣の爺さまと婆さまは欲張りだったものだから、皆で分けるのが嫌で、
「今晩のうちに俺達で掘って来よう」
って堀に山に出かけたんだと。
そして、けやきの下に来た隣の爺さまと婆さまが、たいまつで草むらを照らしてみたら、大きなカメが埋まってたんだと。
けれど、そのカメの中には、とぐろを巻いたマムシが何十匹と入っていたのだと。
隣の爺さまは
「あのじじい、だましたな、仕返しをしてやる」
って言って大きなカメをマムシごと風呂敷に包んで、ヨッコイショ、ヨッコイショと村まで帰ったのだと。
そして、爺さまと婆さまの家の前で、風呂敷に入っているカメをマムシごと家の中に投げて、急いで家に帰ってんだと。
 朝になって、爺さまと婆さまが起きたら、枕元に昨日のカメが転がっていて、中からピカピカ光る小判が部屋中に転がっていたのだと。

とーびんと。