『百足の医者迎え』
虫の仲間で、一匹の虫が病気になった。
「はて、医者、わらわら呼ばって来んなねべ。こがえに急に病気になったらば、大変だべ」
「はて、誰、医者迎えに行って来んべ。お前は・・・」
「おれ、わかんね。半分飛ぶげども、半分しか飛ばんねし」
「いや、おれぁ、ピョンピョンて跳ねっけんど、横ちょの方さばり飛んでんから
わかんねし・・・」なて、何かかにか難癖つけて、行ぐという者いねがったけど。
「んだら、あの、百足ええでないが。百足は足いっぱいあっから、何したて、
一番早いべ、歩くごとは」
「ほだなぁ、ほんじゃ、百足さ頼んでくっか」なて、
「あの、百足よ、今急病で困ってっから、お前、一走り、医者呼ばて来て呉ねが」
なて、百足さ頼んだごんだど。
「ほだが」
百足は「やんだ」ても言わねで、「ほんじゃ、おれ行って来(く)っこで」
ほうして、こっちは「苦しい、苦しい」なて・・・、うなって苦しがって居たど。
「何だて、百足は帰って来ねもんだなぁ。何しったんだべ。医者でも居ねなだべが」
て、心配していだけ。
「はて、百足、まだ帰って来ね。なじょしったべぁ、行ってみてくる」
百足居たどさ、行って見たど。ほうしたれば、百足、まだ居たけずも。
「百足、何しったごんだ。あんなに、早く行ってきて呉ろて頼んだじば」
「いや、おれ、ワラジ履きしったでこ。おれぁ、いっぱいワラジ履がんなねもんだからよ、
出だすにゃ、遅くて、わかんねなだ」
それから、<百足の医者呼ばり>て、なんぼ足なのいっぱいあったて、
何かかにか欠点あるもんだずがら、この人こうだ、なてばりいわねもんだど。
どーびんと。