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『お釈迦様と鬼』

 むがしむがし、あるどさ、人さらって食ってしまう鬼達いで、そごの人らは困ってだったんだど。
 それ知ったお釈迦様は鬼達呼ばって、真っ黒ぐ煎った豆渡して、
「この豆、畑さ蒔いで、芽出るまで人食わんにぇぞ」
ど、申し渡しだんだども。
  鬼達は、腹へっても、毎日畑さ行って、芽出るように水かげ続げだんだど。
  ほしたら、一ヶ月も経ったどきに、芽出で来たんだど。
  鬼達は喜んで、お釈迦様のどさ行ったんだども。
  ほしたら、お釈迦様は、
「今日忙しくて見に行がんにぇがら、明日まで待っっちぇろ」
て、ひとまず鬼達どご帰したんだど。
  お釈迦様は煎り豆がなんで、芽出したんが不思議だったんだげんども、今晩中に豆の芽なんとがしんなねがら、とりあえずネズミら呼ばったんだど。
  ほして、ネズミらさ、
「鬼の畑の豆の芽、根っこがら皆かじって来てけろ」
って頼んだのだど。
  次の日、お釈迦様は鬼達ど畑さ行ったんだげんど、畑さは芽一本もねぇもんだがら、
「おめんだ、人食いっちゃくて嘘ついだな」
って鬼さ言ったんだど。
んだげんど、近ぐさ居だったカラスが、ネズミ来て、芽食ったごど話してしまったんだども。
  それ聞いだ鬼はごしゃいではぁ、
「お釈迦様がネズミさ芽食せだごんじゃぁ、おらんだは猫さネズミ食せでやっからな」
って言って、猫らさネズミ食せっこどにしたんだど。
  ほだがら、今でもネズミは猫がおっかねんだど。
  どーびんと。

山形弁訳

『お釈迦様と鬼』
むかし、むかし、あるところに、人をさらって食べてしまう鬼達が居て、そこの人達は困っていたんだと。
 それを知ったお釈迦様は、鬼達を呼んで、真っ黒に煎った豆を渡して、
「この豆を畑に蒔いて、芽が出るまで人を食ってはいけないからな」
と申し渡したんだと。
 鬼達は腹が減っても、毎日畑に行って、芽が出るように水をかけ続けたんだと。
 鬼達は喜んで、お釈迦様のところに行ったんだども。
 そしたら、お釈迦様は、
「今日は忙しくて見に行くことができないから、明日まで待ってろ」
と言って、ひとまず鬼達を帰したんだと。
 お釈迦様は煎り豆がなんで芽を出したのか不思議だったのだけれども、今晩中に豆の芽を何とかしなきゃならないので、とりあえずネズミ達を呼んだんだと。
 そして、ネズミ達に、
「鬼の畑の豆の芽を根っこから全部かじって来てくれ」
って頼んだんだと。
 次の日、お釈迦様は、鬼達と畑に行ったのだけれど、畑には芽が一本もなかったものだから、
「お前達、人を食べたくて嘘をついたな」
って鬼達に言ったんだと。
けれども、近くに居たカラスが、ネズミ来て芽食ったことを話してしまったんだども。
 それ聞いて、鬼は怒って、
「お釈迦様がネズミに芽を食べさせたのだったら、俺達は猫にネズミを食わせてやるからな」
って言って、猫たちにネズミを食わせることにしたんだと。
 だから、今でもネズミは猫が怖いんだと。
 どーびんと。