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『猿のお尻はまっかっか』

 むがぁし、むがし、最上地方のある村で、祝い事のある家あったど。
 祝い事あっから、その家では、ぺったんぺったんど餅つぎしったたど。
 その家の裏山さは、ずるい猿いで、餅つぎの音聞いだ猿は、どうやって、餅ぶんどっかなぁって考え始めだごんだど。
 ほして、猿は、餅つぎ終わんな待って、餅つぎ終わったころに、
「裏の田んぼさ、おぼご落ぢだぞー」
って叫んだんだども。
 家の人らは、
「そりゃ大変だ。早ぐ助けんなねっ」
って、わらわらど田んぼさ走ってっだど。
 ほして、猿は誰もいねぐなった家さ入って、餅入った臼担いで裏山さ逃げでったんだど。
 田んぼさ向がった人らは、おぼごめらがちゃんと遊んでだな見で、安心して、
「ないだ、ちゃんといだでら」
って家さ戻ったんだど。んだげんど、家さ着いだら臼ねがったんだど。
裏山の方見だら、臼担いだ猿が走って行ぐな見えだんだど。
 ほだがら、家の旦那は、大っきな声で、
「ワンワンッ、ワンワンッ」
って犬の泣き真似したんだど。
 ほしたら、犬嫌いの猿はたまげではぁ、臼担いだまんま、ひっくり返ったごんだど。
 そんどきに臼ん中の餅が落ぢで、猿のお尻さくっついだんだど。
 つきたての熱い餅、尻さくっついだもんだがら、猿は、
「アッチッチ、アッチッチ」
って、わらわら逃げ出したなだど。
 それがら、猿のお尻は赤くなったんだど。
 どーびんと。

山形弁訳

『猿のお尻はまっかっか』
 むかし、むかし、最上地方のある村で、祝い事のある家があったんだと。
 祝い事があるため、その家では、ぺったんぺったんと餅つきをしていたんだと。
 その家の裏山には、ずるい猿が住んでいて、餅つきの音を聞いた猿は、どうやって、餅を盗もうかなぁと考え始めたんだと。
 そして、猿は、餅つきが終わるのを待って、餅つきが終わったころに、
「裏の田んぼに、子供が落ちたぞー」
って叫んだんだと。
 家の人たちは、
「そりゃ大変だ。早く助けなきゃならないっ」
って、急いで田んぼに走って行ったんだと。
 そして、猿は誰もいなくなった家に入って、餅が入った臼を担いで裏山に逃げて行ったんだと。
 田んぼに向かった人たちは、子供たちが遊んでいるのを見て、安心して、
「なんだ、ちゃんといるじゃないか」
って家に戻って来たんだと。だけど、家に着いたら臼が無かったんだと。
裏山の方を見たら、臼を担いだ猿が走って行くのが見えたんだど。
 だから、家の旦那は大きな声で、
「ワンワンッ、ワンワンッ」
って、犬の泣き真似したんだと。
 そしたら、犬嫌いの猿はびっくりして、臼を担いだまま、ひっくり返ったんだと。
 そのときに臼の中の餅が落ちて、猿のお尻にくっついたんだと。
 つきたての熱い餅が尻にくっついたものだから、猿は、
「アッチッチ、アッチッチ」
って、急いで逃げだしたんだと。
 それから、猿のお尻は赤くなったそうな。
 どーびんと。