『塩っぱい爺さん』
むがしむがし、村はずれさ家あったど。
そごの爺さん、働きさ町まで行ってだったんだど。
その町がらの帰り道さ、塩梅悪りぐ、少し悪さする狐、二匹いで、
とぎどぎ、町の帰りに騙さっちぇ、油揚げ盗らっちゃだの、
いや法事の魚取らっちゃだのって、いだずらする狐だったんだども。
で、爺さん、あるどぎ、町さ買物さ行った帰りに途中まで来たら、
孫らぁ迎えさ来て、
「爺ちゃん爺ちゃん、迎えさ来たどごだ」
「ほう、迎えさ来てけっちゃんが」なて、
「爺っちゃ、重でがったべ。そいづ、俺たがってすけっから」
なて、孫は爺さんがら荷物受げ取って、爺さんの先歩いで帰ってぐ。
孫らぁ、テクテクテクテクて、歩ぐな早くて、
「待っちぇろ、待っちぇろ」
て、追っかげっけんども、とうとう孫に負げでしまって、
「早ぇごど。あの野郎めら、おれどご一人置いで帰るなて、ほに、いたずら野郎めらだ」
なて、爺さん家さ着いだらば、
「ないだ、爺さん、孫なて家さ居だぜ」
「ないだごど。ハハァ、さではおれ、狐にやらっちゃなぁこりゃ」
なて、爺さん、騙さっちゃげんど、おかしくなってきて、
「ようし、あの野郎、いだずらしたがら、おれも、ちいっと狐かもってけんなね」
なて、爺さん町さ行って、塩ちぃと買って、懐さ入っで帰って来たど。
ほしたら、また途中で孫来て、
「爺ちゃん、爺ちゃん、何だ今日はなんにも買って来ねなが・・・」
「うん、何にもねぇげんど、ちぃとばり懐さ入ってだ」
なて、ほして、爺さん、
「まず、爺っちゃ、眠たぐなったがら、ここで寝んべ、孫ど一つ、原っぱで」
「ほだが」
なて言って、爺さんど孫眠ったんだども。
「爺っちゃ、お土産何や」
爺さん、この孫が狐だど思って、孫の顔ぎちっと押さえで、懐がら塩ひとにぎりつかんで、
孫の口さ、入っちゃど。そしたら孫たまげではぁ
「いや、塩っぱい、塩っぱい」
て、狐になって逃げでったども。
それがらは、爺さん町さ買物さ行ったり、用足しさ行っても、
「ああ、塩っぱい爺さん来た、塩っぱい爺さん来た」
て、狐達は、けっして爺さんどご、かまわねぐなったんだど。
とーびんと。