『たぬきと若者』
むがしむがし、ある村さ知恵者で親孝行な若者いだったど。
若者はお母さんと二人で畑耕して暮らしったっけど。
その裏山さは、人間を困らすなが好ぎなたぬきが住んでだったんだど。
ある日、たぬきが暇つぶしに旅人さ化げで、若者の家さ行ったんだど。
若者は、すぐにたぬきだなって気付いだんだと。んだげんど、しゃねふりして、一緒に飯食いながら話したんだど。
ほして、たぬきが若者さ、
「嫌いな食べ物って、何があっかっし」
って聞いだごんだど。
若者は、たぬきどごからがってやっかど思って、
「まんじゅうだ」
って答えだごんだど。
ほしたら次の日の朝、若者の枕元さ、作りたてのまんじゅうが山盛になって置いであったども。
若者は大喜びでお母さんと二人で、腹くっちぐなるまで、食ったど。
若者のびっくりした様子を見ようど思って覗いったったたぬきは、ごしゃいではぁ、夜中に村中の石ころ集めで、若者の畑さなげだごんだと。
次の日の朝、畑さ行った若者とお母さんはびっくりしたげんど、若者はたぬきの仕返しだど思って、大っきな声で、
「いや、母さん、有難い事だ。誰が分がんねげんど、こんなに石ごえまいでけっちゃでら。これ馬ふんだったら困ったごどだったげんど、いや、いがったいがった」
これ聞いたたぬきは、また悔しがって、夜中に畑がら石ころ全部運んで、今度は村中の馬ふん集めで畑さなげだごんだど。
次の日、若者どお母さんは喜んで、
「困った困った」
って、言いながら畑仕事したんだど。
どーびんと。