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『螺とカラス』

 むがしむがしのごどだっけど。
 雪ぁ消えで、暖げ春きたんだど。
 田んぼさは、螺出できて、日向ぼっこして遊んでだっけど。
 空さは、カラスがカアカア飛び回ってで、カラスは螺見つけで、
「んまそうな、ごっつぉだごど」
って言って螺どご咥えだっけど。
 螺はたまげで、食わんにぇうぢにカラスさ言ったど。
「カラスカラスのかん三郎どん、ビロードみでなドレス着て、
 綺麗な声でカアカア歌ったら素晴らしもんだべなぁ。
一づ歌って聞かせどごやぇ」
ど弁ちゃら語って煽でだっけど。
 カラスはいい気になって、大っきな口開げで、
「カアー、カアー、カアー」
って歌ったもんだがら、螺ぁポタンと田んぼさ落ぢだど。
 そうして、カラスが歌ってだうぢに、わらわらど田んぼの泥ん中さもぐったど。
 そして螺は、
「カラスカラスのかん三郎
黒い服着て、馬鹿づらさげで
古い火箸みでな、カス足で
下手くそな歌、得意になって
格好悪りぃ、馬鹿カラス」
と悪態ついだど。
得意になってだったカラスは、ごしゃいで、
「ツブや螺、泥んこまみれの臭い螺
自分の姿を見なしゃんせ」
って言って、逃がした螺どご、口ばしで探したんだど。
 一つ つっつけば倍もぐり
 二つ つっつけば四倍もぐり
 三つ つっつけば六倍もぐり
「カア悔しぇ、俺の口ばし長げれば、螺の二つ三つ取れんなに」
と、カアカア泣いだっけど。
 こうして、カラスは、ちっちゃこい螺の知恵に負げでしまったんだど。
 ほだがらな、知恵者になって、世渡り上手になんなねなんど。
 とーびんと。

山形弁訳

『螺とカラス』
むかしむかしのことだっけど。
  雪が消えて、暖かい春がきたんだと。
  田んぼには、螺が出てきて、日向ぼっこして遊んでいたんだと。
  空には、カラスがカアカア飛び回っていて、カラスは螺を見つけて、
「うまそうな、ごちそうだ」
って言って螺を咥えたんだと。
  螺はびっくりりて、食われないうちにカラスに言ったんだと。
「カラスカラスのかん三郎どん、ビロードのようなドレスを着て、
  きれいな声でカアカア歌ったら素晴らしいものなんでしょうなぁ
  一つ歌って聞かせてもらえませんか」
と、弁ちゃら語っておだてたんだと。
  カラスはいい気になって、大きな口を開けて、
「カアー、カアー、カアー」
って歌ったものだから、螺は、ポタンと田んぼに落ちたんだと。
  そうして、カラスが歌っているうちに、急いで田んぼの泥の中に潜ったんだと。
  そして、螺は、
「カラスカラスのかん三郎
黒い服着て、馬鹿づら下げて
古い火箸のような、カス足で
下手くそな歌、得意になって
格好悪い、馬鹿カラス」
と、悪態ついたんだと。
得意になっていたカラスは、怒って、
「ツブや螺、泥んこまみれの臭い螺
自分の姿を見なしゃんせ」
と言って、逃がした螺を、口ばしで探したんだと。
  一つ つっつけば倍もぐり
  二つ つっつけば四倍もぐり
  三つ つっつけば六倍もぐり
「カア悔し、俺の口ばしが長ければ、螺の二つや三つ取れるのに」
と、カアカア泣いたっけど。
  こうして、カラスは、小さい螺の知恵に負けてしまったんだと。
だからな、知恵者になって、世渡り上手にならなければならないんだと。
とーびんと。