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『四本目の足』

 むがしむがし、犬どご一匹飼ってだ爺っちゃど婆っちゃいだっけど。
 今ど違って、その頃の犬さは、足三本しかねがったがら、歩ぐなも大変だったんだど。
「もう一本足あったら、早ぐ走られんなだげんどなぁ」
爺ちゃど婆っちゃは、いっつも言うっけんだど。
ほして、
「そのうぢ松嶺の御行様さお願いしてみっか」
どいうごどになったんだど。
  ほうして、白い着物さ白い頭巾をかぶった御行様が回って来たどぎに、爺っちゃど婆っちゃは、米を一升たがってきて、
「御行様、これで、おら家の犬の足、4本にしてけんにぇがっし」
てお願いしたんだど。
御行様は目閉じで、しばらぐ考えだあど、
「爺っちゃ、五徳たがって来てけろ」
て言ったんだど。
爺っちゃが、炉端がら五徳たがってくっと、御行様は、五徳の足を一本はずして、犬の尻たぶさくっつけたんだと。
ほしたら、みるみるうぢに五徳の足が立派な犬の足に変ったなだど。
爺っちゃど婆っちゃは大喜びで、犬も喜んで走り回ってだっけど。
爺っちゃど婆さまは、御行様さ厚くお礼を言って、犬さも、恩を忘んにぇように足を大事にしろよど、なんべんも言い聞がせだんだと。
  んだがら、今でも犬は、小便すっとぎに後ろの足をあげで、御行様がらもらった足さ小便がかからないようにしてるんだと。
どーびんと。

山形弁訳

『四本目の足』
むかし、むかし、犬を一匹飼っていた爺さまと婆さまがいたんだと。
  今と違って、その頃の犬には、足が三本しかなったので、歩くのも大変だったんだと。
「もう一本足があったら、早く走られるんだけどなぁ」
爺さまと婆さまは、いつも言っていたんだと。
そして、
「そのうち松嶺の御行様にお願いしてみるか」
ということになったんだと。
 そうして、白い着物に白い頭巾をかぶった御行様が回って来たときに、爺さまと婆さまは、米を一升持ってきて、
「御行様、これで、俺らの家の犬の足を四本にしてもらえませんか」
とお願いしたんだと。
御行様は目を閉じて、しばらく考えたあと、
「爺さま、五徳を持って来てくれ」
て言ったんだと。
爺さまが、炉端が五徳持ってくると、御行様は五徳の足を一本はずして、犬の尻たぶにくっ付けたんだと。
そしたら、みるみるうちに五徳の足が、立派な犬の足になったんだと。
爺さまと婆さまは大喜びで、犬も喜んで走り回ったのだと。
爺さまと婆さまは、御行様に厚くお礼を言って、犬にも恩を忘れないように足を大事にしろよと何度も言い聞かせたんだと。
 だから、今でも犬は、小便するときに後ろの足をあげて、御行様からもらった足に小便がかからないようにしているんだと。
どーびんと。