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『雪女と若者』

 むがしむがし、山の中で一人の若者が暮らしていだんだと。
 ある吹雪の日、若者が囲炉裏で濡っちゃ着物乾がしったったら、
「今晩は。今晩は」
って女の人が訪ねで来たんだど。
 若者は道に迷ったんだなって思って、家さ入っちぇけっちゃんだど。
 ほだげんど、吹雪で寒がったべに囲炉裏さあだんねがったんだど。
 その日がら女は、どさ行ぐわげでもねぐ、飯の支度したり掃除したりど一生懸命働ぐんだっけど。
 ある日、若者は女さ嫁になってけろって頼んだんだど。
 ほして、二人は夫婦になって、若者は毎日幸せだったんだど。
 ほだげんど、春が近づいできて、降る雪が少ねぐなって、暖っがい日が多ぐなってきたら、女に元気がねぐなってきたんだど。
 若者は女さ
「春になって、もっと暖っがぐなったら病気もいぐなっから頑張れな」
って励ましったんだっけど。
 ある日若者が山さ仕事に行ったどぎ、ふと女のごどが気になって、わらわら家さ戻ったんだど。
 ほしたら、女は家の中さも外さもいねがったんだど。
 若者は山がら山、谷がら谷どご探して回ったんだげんど、見つけるごどが出来ぎねがったんだど。
 しばらぐして、春が来て、木の芽がふぐらんで、花が咲ぎ始めたころに、若者は女が雪女であったごどに気づいだんだど。
 とーびんと。

山形弁訳

『雪女と若者』
 むかし、むかし、山の中で一人の若者が暮らしていただんだと。
 ある吹雪の日に若者が囲炉裏で濡れた着物を乾かしていたら、
「今晩は。今晩は」
って女の人が訪ねて来たんだと。
 若者は道に迷ったんだな、と思って、家に入れてあげたんだと。
 けれど、吹雪で寒かっただろうに囲炉裏にもあたらなかったんだと。
 その日から女は、どこに行くわけでもなく、ご飯の支度をしたり掃除したりと一生懸命働くようになったんだと。
 ある日、若者は女に嫁になってくれって頼んだんだと。
 そして、二人は夫婦になって、若者は毎日幸せだったんだと。
 けれど、春が近づいてきて、降る雪が少なくなって、暖かい日が多くなってきたら、女に元気がなくなってきたんだと。
 若者は女に
「春になって、もっと暖かくなったら、病気も良くなるから、頑張れよ」
って励ましてたんだと。
 ある日若者が山に仕事に行ったときに、ふと女のことが気になって、急いで家に戻って来たんだと。
 そしたら、女は家の中にも外にもいなかったんだと。
 若者は山から山、谷から谷を探して回ったんだけれども、見つけることが出来なかったんだと。
 しばらくして、春が来て、気の芽がふくらんで、花が咲き始めたころに、若者は女が雪女であったころに気づいたんだと。

 どーびんと。