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『夢買い彦市』

 昔むがし、庄内の浜で、五助ど彦市ってなが網の修理しったったど。
 ポカポカ暖っががったもんだがら、五助ぁ砂浜さ寝っ転がってだったら寝でしまったんだど。
 彦市が、鼻ちょうちん出しながら寝った五助どご眺めったったら、鼻ちょうちんど一緒に、ブーンって一匹の蜂が五助の鼻がら飛び出できて、飛島のほうさ飛んでったなだど。
 彦市は、
「なんだべ、おれも寝ぼげったみでだなぁ」
て海の向こうさ見える飛島眺めったったら、さっきの蜂、またブーンて戻ってきて、五助の鼻の中さ入ってったんだど。
しばらぐして、五助、目覚ますなり、
「おれ、変な夢見だぁ。なんかよぉ飛島さある山の頂上さ大っきな椿の木あって、一匹の蜂がその木の廻り飛びながら、おれさこご掘れこご掘れって言うなよ。んだがら掘ってみだんよな。ほしたら、そっから大判小判ザックザックてよぉー、いや、いい夢だったなぁ」
て、言うんだっけど。
 彦市はそれ聞ぐなり、
「よし五助、おれど一緒に飛島さ行ってみんべ」
て誘ったなだど。
んだげんど五助は、
「そがな夢どご真に受げで、あげな飛島までなて、行ってらんにぇ」
て、さっぱりその気にはなんねがったど。
 ほしたら彦市は、
「んじゃ五助、おれさその夢売ってけろ」
て、五百文で買ったんだど。
  彦市は、エンヤコーラ、エンヤコーラて、七日七晩、舟漕いで飛島さ着ぐど、山の頂上さ登ったなだど。
 ほしたら、五助の話どおり、大っきな椿の木があったもんだがら、その根元掘ってみだんだど。
 ほしたら、夢のとおり、大判小判ザックザックて出できたんだど。
彦市は、たいした長者さまになって幸せに暮らしたんだど。
どーびんど。

山形弁訳

『夢買い彦市』

 昔むかし、庄内の浜で、五助と彦市という者が網の修理をしていたんだと。
  ポカポカ暖かかったものだから、五助は砂浜に寝っ転がってたら寝てしまったんだと。
 彦市が、鼻ちょうちん出しながら寝ている五助を眺めていたら、鼻ちょうちんと一緒に、ブーンて一匹の蜂が鼻から飛び出てきて、飛島の方に飛んで行ったんだと。
 彦市は、
「なんだろう、おれも寝ぼけているいたいだな」
て海の向こうに見える飛島眺めてたら、さっきの蜂が、またブーンて戻ってきて、五助の鼻の中に入って行ったんだと。
しばらくして、五助は目を覚ますなり、
「おれ、変な夢を見たぁ。なんか飛島にある山の頂上に大きな椿の木があって、一匹の蜂がその木の廻りを飛びながら、おれにここ掘れここ掘れって言うのよ。だから掘ってみたんだ。そしたら、そこから大判小判ザックザックでよー、いや、いい夢だったなぁ」
て言うんだっけど。
 彦市はそれを聞くなり、
「よし五助、おれと一緒に飛島に行ってみよう」
て誘ったのだと。
けれども五助は、
「そんな夢を真に受けて、あんな飛島までなんて、行っていられない」
て、さっぱりその気にはならなかったんだと。
 ほしたら彦市は、
「それじゃあ五助、おれにその夢を売ってくれ」
て、五百文で買ったんだと。
 彦市は、エンヤコーラ、エンヤコーラて、七日七晩、舟を漕いで飛島に着くと、山の頂上に登ったんだと。
 ほしたら、五助の話どおり、大きな椿の木があったものだから、その根元を掘ってみたんだと。
 ほしたら、夢のとおり、大判小判がザックザック出てきたんだと。
彦市は、たいした長者さまになって幸せに暮らしたんだと。
  どーびんと。