『ばば皮』
むがぁしむがし、爺様いだっけど。
爺様さは三人の娘いだっけんだど。
ある年、田んぼさ水ねくて困ってだったんだど。
そさ一匹の蛇がきて、
「お前の娘、嫁さけっこんじゃ水けっから」
って言うなだっけど。
しょうがねぐ娘らさ話したら一人目ど二人目の娘はやんだって言うんだど。
ほだげんど、三人目の娘は、
「嫁入り道具にひょうたん干と針千本、買ってけっこんじゃ私が嫁さ行ぐ」
っていうんだっけど。
ほして、嫁入り道具もって蛇いだ山奥の沼さ行ったごんだど。
蛇は娘の嫁入り道具のひょうたんどご沼さ沈めっかど思って頭突っ込んだなだど。
ほしたら、中さ入れったった針さ刺さって死んでしまったなだど。
ほだげんど、蛇の嫁さ行った娘なて帰る場所ねぇって思って山道とぼとぼ歩いったったら、一軒の家あったど。娘は考えで、その家さ、
「もし、おれ旅の者だげんども、おれどご使ってけんにぇべが」
って、言ったなだど。その家の婆様は、
「おら家で使うなてできねげんど、庄屋さまの家で下働き欲しいって言ってだったがら聞いでみっから。ほだげんど、お前そがいにきしぇな顔で行ったらダメだ。おら家さあるばば皮かぶってげ」
って、ばば皮もらったなだど。
ほして、ばば皮かぶった娘は、庄屋様の下働ぎになったなだど。
ある晩に下働ぎのばばの部屋さ灯りついったな見だ庄屋様の息子が、
「はて今頃灯りなて何だべな」
って、ばばの部屋覗いでみだらば、めんごい娘が字の練習しったけんだど。
息子は、その娘に一目ぼれしてはぁ、ついには病気になってしまったなだど。
お医者様もお手上げで、坊主さ診せだら、
「この家の女衆に水持ってこさせろ。ほして水飲んだ女ど一緒にすっと治る」
なて言うんだっけど。
庄屋様は家の女衆一人づつ水持ってこさせだなだげんど、誰の水も飲まねがったど。
「あど誰もいねなが。そういえばばばも女だがら水持ってこさせろ」
って、ばばに水持ってこさせだんだど。
ほしたら、息子はその水飲んだもんだがら、皆たまげだごんだど。
ほして、ばばを風呂さ入っちゃら、ばば皮が剥がっちぇ中がら綺麗な娘が出できて、皆たまげだべし、喜んだべしで、何日もお祝い続いだど。
どーびんと。