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『提灯お化け』

 むがしむがし、ある村で、夜、村の神社さ行ぐどお化げでるなて話出て、村の人らはおっかねくて、村の神社さ近づがねぐなったど。
 んだげんども、その村の物好きな爺様が、
「おら、神社さ行ってみでくる」
なて言って、神社さ行ったんだど。
 神社さ行った爺様は、身体むずむずしてきて踊り出したっけんだど。
「おらぁ、何のお化けだ、お前は何のお化けだ」
なて踊ってだったんだど。
 ほしたら、どっからが、
「おらぁ、提灯のお化けだ。おらぁ提灯のお化けだぁ」
なて、提灯のお化けが出てきて、二人で踊ったんだど。
 ほして、しばらぐ踊って、爺様は、
「明日の晩げも来っからなぁ」
って言って帰ったんだど。
 ほして、また次の日も行ったらば、また提灯のお化け出てきたっけんだど。
 爺様はなしてお化け出でくんなが不思議に思って、あだりを見で回ったど。
 ほしたら、虫に食わっちゃ古い提灯出できたなだど。爺さまは、
「ははぁ、これ片付げで貰いっちゃがったんだな」
て思って、ちゃんと葬ってやったんだど。
 ほしたら、次の日がら提灯のお化けは出ねぐなったんだど。
 ほだがらな、何でも古ぐなったがらって、そごらさ投げんなでなくて、ちゃんと片づげだり葬ってやんなねんだど。

 どーびんと。

山形弁訳

『提灯お化け』
 むかしむかし、ある村で、夜、村の神社に行くとお化けが出るという噂が出て、村の人達は怖くて、村の神社に近づかなくなったんだと。
 けれども、その村の物好きな爺様が、
「おら、神社に行ってみてくる」
って言って、神社に行ったんだと。
 神社に行った爺様は、身体がむずむずしてきて踊り出したんだけと。
「おらぁ、何のお化けだ、お前は何のお化けだ」
って踊ってたんだっけと。
 そしたら、どこからか、
「おらぁ、提灯のお化けだ。おらぁ、提灯のお化けだぁ」
って、提灯のお化けが出てきて、二人で踊ったんだと。
 そして、しばらく踊って、爺さまは、
「明日の晩げも来るからなぁ」
って言って帰ったんだと。
 そして、また次の日も言ってみたら、また提灯のお化けが出て来たんだと。
 爺さまは、どうしてお化けが出てくるのか不思議に思って、あたりを見て回ったんだと。
 そしたら、虫に食われた古い提灯が出て来たんだと。
 爺さまは、
「ははぁ、これ片づけてもらいたかったんだな」
って思って、ちゃんと葬ってやったんだと。
 そしたら、次の日から提灯のお化けは出なくなったんだと。
 だからな、何でも古くなったからといって、そこらに捨てないで、ちゃんと片付けたり、葬ってやらなければならないんだと。
 どーびんと。