『平種子柿』
むがあしむがし、あるどさ柿の木を大事に育でった若者いだっけど。
ある年、若者の柿の木さ人が入られるほどおっきな柿の実がなったんだど。
「こがいにおっきい実なるなて、中空っぽであんめが」
って叩いでみっと、中がら、
「待った」「いや待ったなし」
って聞ごえでくんなだど。
若者はびっくりして、小刀で皮さ穴開げで、中覗いでみだらば、中で年寄りの仙人ど若い男の仙人が五目並べしったっけんだど。若者も五目並べ好ぎだったもんだがら、柿の中さ入って見でっこどにしたんだど。
そのうち、若い男が負げそうになったもんだがら、若者は、
「こご止めろ、そさ打ったら勝でっぞ」
って若い男さ教えたんだど。
ほしたら、年寄りが、
「お前が教えだなが、でねがったら負けるわげねぇ」
若者はおっかねぐなって、逃げ出したんだど。
ほだげんど、年寄りも若い男も若者さ碁石投げながらずっと追っかげでくんなだども。
なんぼ逃げでも、うっしょがら白ど黒の碁石が飛んでくるもんだがら、若者は夢中で逃げ続けたんだど。
いづの間にか若者は気失ってで、目覚ましたら周りさ白ど黒の柿の種がいっぺ落ぢったったなだど。
ほして、その種蒔いだら、八年後に種なしの見事な柿が山ほど実ったなだど。
あの仙人らが柿の中さあった種みな投げだがらだど。
どーびんと。