『片目の爺さまと狐』
むかしむかし、あるどさ、片目の爺さまど婆さまいだったど。
あるどぎ、爺さまが、
「婆さま、これがら町さ行ぐがら、帰んな遅ぐなっからな」
なて、言って出がげだんだど。
近ぐさは、婆さまどご馬鹿にしった狐住んでで、これ聞いだ狐は、爺のふりして婆さまの飯でも食うがななて考えだごんだど。
しばらぐして、
「婆さま、婆さま、今帰ったぞ」
なて、爺さま帰ってきたなども。婆さまたまげで、
「なんだごど、爺さま早ぇがったごど」
て、爺さま見だらば、左片目になってだったなだど。
婆さまは、ははあ、これは狐だなって思って、
「爺さま、これがら飯こしゃうがら、いつも通り俵さ入っておごえ」
なて言ったんだど。ほしたら爺さま、
「ほだっけなぁ、いつも通り俵さはいんなねなぁ」
なて俵さ入ったなだど。ほして婆さまが、
「ほしたら爺さま、いつも通り風呂さ入っちぇけっがら、縄かげっぞ。いつも通り自分で俵端かげでけろ」
なて言うなだっけど。ほして、
「ほんじゃ風呂さ入れっからな」
なて、風呂さ俵の爺さま入っちぇしまったんど。
「なじょだ。爺さま」
「ちと、ぬるいみでだな」
「ほだが、ほだらいつも通り風呂さ蓋すっから待っちぇろ」
なて風呂さ蓋したごんだど。ほしたら婆さま、どんどん火焚いではぁ、爺さま中で
「熱い熱い」
なていだっけども俵さ入ってっから何にもさんにぇくて、とうとう茹でらっちぇしまったなだど。
ほうしったら右片目の爺さま帰ってきて、婆さまは、
「これこれこうで、狐獲ったどごだ。今日は狐汁して食うべ」
なて、とうとう狐は狐汁になってしまったんだど。
どーびんと。