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『子産石』

 むがしむがし、ある村の道端さ、なじょしても動がね石あったなだど。
 いづがらだが分がんねげんど、夜になっと、その石が化げで出るなて言われるようになって、その石は「化け石」なて呼ばれるようになったなだど。
 ほだがら、誰も夜に化け石のある道なて通んねぐなったなだど。
 ある日、隣の村まで用足しさ行った庄屋さんは遅ぐなってはぁ、どうしても夜化け石の道通んなねぐなったなだども。
 庄屋さんはおっかなびっくり、化け石の一本道を通抜げだがど思ったら、うっしょがら女の声で、
「お願いします。助けでください」
「お願いします。助けでください」
って声聞こえだんだっけど。庄屋さんはびっくりして、
「だっ誰だ」
って振り向いだなだげんど、誰もいねがったなだど。
 ほしたら、化け石がら、
「私は、化け石って呼ばっちぇだ女石です。私さは間もなぐ子ども産まれんなだげんど、腹減って困ってだどごです。何が食べるもの恵んで貰わんにぇべが」
って言うのだっけど。
 庄屋さんは可哀そうに思って、わらわらて家さ戻って、にぎり飯いっぱい作って化け石のどさ持ってったなだど。
 ほしたら、化け石がら手出てきて、にぎり飯をあっという間に食ってしまったなだど。
 食べ終わった化け石は、にぎり飯ほどの石を取り出して、
「お礼に持ってってけんにぇべが、この石は庄屋さんの家をいづまでも繁盛させる子産石です」
って言って、化け石は普通の石に戻ったなだど。
 庄屋さんの家はそれがらいつまでも繁盛して、家さある子産石が本当に子石を産むごどもあったそうな。
 それがら化け石は、生石大明神としてまつられ、お供え物もあがるようになったがらが、化げで出るごどはねぐなったなだど。
 どーびんと。

山形弁訳

『子産石』
 昔むかし、ある村の道端に、どうしても動かない石があったのだと。
 いつからかは分からないけれども、夜になると、その石が化けて出るなんて言われるようになって、その石は「化け石」なんて呼ばれるようになったのだと。
 だから、誰も夜に化け石のある道なんて通らなくなったのだと。
 ある日、隣の村まで用足しに行った庄屋さんは遅くなってしまい、どうしても夜化け石の道を通らなければならなくなったのだと。
 庄屋さんはおっかなびっくり、化け石の一本道を通り抜けたかと思ったら、後ろから女の声で、
「お願いします。助けてください」
「お願いします。助けてください」
って声が聞こえてきたんだと。庄屋さんはびっくりして、
「だっ誰だ」
って振り向いたんだけれども、誰もいなかったのだと。
 ほしたら、化け石から、
「私は化け石と呼ばれている女石です。私には間もなく子供が生まれるのですが、腹が減って困っているところです。何か食べるものを恵んでもらえませんか」
っていうのだっけど。
 庄屋さんは可哀そうに思って、急いで家に戻って、にぎり飯をいっぱい作って化け石のところに持って行ったのだと。
 そしたら、化け石から手が出てきて、にぎり飯をあっという間に食ってしまったのだと。
 食べ終わった化け石は、にぎり飯ほどの石を取り出して、
「お礼に持っていってくれませんか、この石は庄屋さんの家をいつまでも繁盛させる子産石です」
って言って、化け石は普通の石に戻ったのだと。
 庄屋さんの家はそれからいつまでも繁盛して、家にある子産石が本当に子石を産むこともあったそうな。
 それから化け石は、生石大明神としてまつられ、お供え物もあがるようになったからか、化けて出ることはなくなったのだと。
 どーびんと。