『山姥と名刀』
むがぁしむがし、ある村さ隼助(はやすけ)どいう若者いだっけど。
隼助の家は小っちゃくて貧乏だったげんども、先祖代々伝わる刀はそれはそれは立派な名刀だったなだど。
ある日、隼助が山さブドウやあけび取りさ行ったどぎ、日当だりのいい場所さ、あけびのつるで編んだ大っきくて平らなカゴ拾ったなだど。
「おお、これはちょうどいい」
なて、隼助はそのカゴさブドウやらあけびやら入っちぇ山おりだんだど。
その夜の事、山のほうがら、
「ドシン、ドシン」
っていう地響きが家さ近づいできたがど思ったら、家の戸がドンドンドン、ドンドンドンって叩がっちぇ、大声で
「隼助!ぞうり返せ!わしのぞうり返せ」
と叫ばっちゃなだっけど。隼助はふるえながら、
「おら、人のぞうりなてしゃね」
て言ったなだど。ほしたら、
「嘘つぐな。干しったった俺のぞうりの片方、山がら持ってきたべ。返せ」
「ぞうりなてしゃねげんど、今日山で拾ったものなら家の裏さ干しったがら、持ってってけろ」
って言ったなだど。
ほしたら、それっきり静がになって、翌朝外さ出でみだらば、大っきな足跡が山まで続いったったんだど。
「この足跡は山姥に違いね。あの大っきなカゴは山姥のぞうりだったなが・・」
隼助が山姥に襲わんにぇがったなは、山姥が家宝の名刀をおっかねがって家さ入って来らんにぇがったがらなんだど。
ほして、その名刀はいつの頃か、万民の為に羽黒山におさめられたのたど。
どーびんと。