山形の方言と山形県の温泉や観光情報

『水の種』

　むがぁしむがし、白鷹山の麓は水の不便などごで、毎年日照りで、田んぼなど、みなカラカラになってしまうんだっけど。
　近ぐの村さは、与左衛門ていうやさしい若者が住んでだったんだど。
　ある日、その若者は、村はずれで、おぼごめらが小っちゃい白い蛇いじめったな見つけだんだど。
　若者は蛇をもごせど思って、その蛇どご助けで、逃がしてけっちゃんだど。
　ほしたら、その晩に若者の枕もどさ、きれいな娘がきて、
「箱根明神様がら水の種もらえば、水で苦労すっこどはねぐなっぞ」
って言ったんだど。
　それ聞いで若者は、箱根明神さ会いに行くごどにしたんだど。
　ほして、やっと箱根明神さ辿り着いだ若者は、
「わが村さ水を給え。われさ水の種を給え」
って熱心に祈ったごんだど。
　ほして、若者が目を開げだらば、目の前さ二本の徳利があったんだど。
　これが水の種に違ねぇって思って若者は、わらわらて村さ帰ったど。
　ほして、山ひだのあっちこっちさ徳利の水撒いで回ったど。
　ほしたら、大沼、荒沼て、今では白鷹四十八沼て言われる程たくさんの沼がでぎで、それがら白鷹山の麓では、水に困るなてごどがねぐなったんだど。

　どーびんと。

山形弁訳

『水の種』
　むかぁしむかし、白鷹山の麓は水の不便なところで、毎年日照りで、田んぼはみなカラカラになってしまうんだっけど。
　近くの村には、与左衛門ていう優しい若者が住んでいたんだと。
　ある日、その若者は、村はずれで、子供たちが小さい白い蛇をいじめているのを見つけたんだと。
　若者は蛇をかわいそうに思って、その蛇を助けて、逃がしてあげたんだと。
　ほしたら、その晩に若者の枕もとにきれいな娘がきて、
「箱根明神様に水の種を貰えば、水で苦労することはなくなりますよ」
って言ったんだと。
　それを聞いて若者は、箱根明神に会いに行くことにしたんだと。
　そして、やっと箱根明神に辿り着いた若者は、
「わが村に水を給え、われに水の種を給え」
って熱心に祈ったんだと。
　そして、若者が目を開けたら、目の前には二本の徳利があったんだと。
　そして、山ひだのあっちこっちに徳利の水を撒いて回ったんだと。
　そしたら、大沼、荒沼と、今では白鷹四十八沼と言われる程のたくさんの沼ができて、それから、白鷹山の麓では、水に困るなどということがなくなったんだと。
　どーびんと。