山形の方言と山形県の温泉や観光情報

山形弁(置賜方言)の昔話と山形県情報。方言で語る昔話で山形を感じよう!


  • 山形弁の訳を見る
  • 昔話通常バージョン
  • 昔話テキストバージョン

『猫絵十兵衛』

 むがしむがし、猫絵十兵衛って猫の絵描ぐなじょんだ飴売りいだっけど。
 あるどぎ、十兵衛が飴売りして村々歩いでだったら、しゃあねうぢに妙な屋敷街さ入り込んだなだど。
 街の中はシーンとしてで、どさ行っても人いねがったんだども。妙だなぁって思いながら歩いでだったら、一人の姉さまが泣ぎながら十兵衛の前さ現れで、
「大っきなネズミが出で街の人は皆食わっちぇしまったなだ。どうが助けでもらわんにぇべが」
て言うなだっけど。
 それ聞いだ十兵衛は、筆ど紙を借りで強そうな猫の絵を描いで、街中の家々さ貼って歩いだなだど。
 ほして、夜も更けで来た頃、馬の子ほどもある大きなネズミが出できたなだど。隠っちぇ見ったった十兵衛は、猫の絵さ向がって、
「出ろ、出ろ出ろ」
って言ったなだど。そしたらば、絵の中の猫が次から次に出できてはぁ、ネズミさ飛びかがってったなだど。ほしてあっという間にネズミを食い殺してしまったなだど。
姉さまは大喜びで、
「ありがとうございます。どうか、わたしの婿になってください」
と頼んだなだど。十兵衛は、
「私には妻も子もある。ないのは金だげだ」
ど言ったなだど。ほして、お礼にたくさんの金貰ったなだど。
お金背負っての帰り道、十兵衛は重だくて重だくて、ちょっと休憩すっかど思って、はっと我に返ったなだど。背中の重い飴箱がのしかかってきて重だくて、居眠りしったなさ気付いだんだど。
 どーびんと。

山形弁訳

『猫絵十兵衛』
 昔むかし、猫絵十兵衛という猫の絵を描くのが上手な飴売りがいたんだと。
 あるとき、十兵衛が飴売りして村々を歩いていたら、知らないうちに妙な屋敷街に入り込んだのだと。
 街の中はシーンとしていて、どこに行っても人がいなかったのだと。妙だなあと思いながら歩いていたら、一人の姉さまが泣きながら十兵衛の前に現れて、
「大きなネズミが出て街の人は皆食われてしまった。どうか助けてもらえないでしょうか」
て言うのだっけど。
 それを聞いた十兵衛は、筆と紙を借りて強そうな猫の絵を描いて、街中の家々に貼って歩いたのだと。
 そして、夜も更けてきたころ、馬の子ほどもある大きなネズミが出てきたのだと。隠れて見ていた十兵衛は、猫の絵に向かって、
「出ろ、出ろ出ろ」
って言ったのだと。そしたら、絵の中の猫が次から次に出てきて、ネズミに飛びかかっていったのだと。そしてあっという間にネズミを食い殺してしまったのだと。
姉さまは大喜びで、
「ありがとうございます。どうか私の婿になってください」
と頼んだのだと。十兵衛は、
「私には妻も子もある。ないのは金だけだ」
と言ったのだと。そして、お礼にたくさんのお金を貰ったのだと。
お金を背負っての帰り道、十兵衛は重たくて重たくて、ちょっと休憩しようかと思ったところで、はっと我に返ったのだと。背中の重い飴箱がのしかかってきて重たくて、居眠りをしていたのに気付いたのだと。
 どーびんと。





○山形弁(置賜方言)の昔話

牛蒡と人参と大根 | 雪女郎 | 百足の医者迎え | 大鳥と大海老と大鯨 | 蛙の恩返し | 蟻と蜂の拾い物 | 金の斧・鉄の斧 | 猫が十二支に入らぬ訳 | 部屋の起こり | 笠地蔵 | 金仏木仏 | 豆腐田楽と和尚さま | 一粒の米 | 猫の釜ぶた | 馬鹿婿と団子 | 飴買い幽霊 | お月様とお日様と雷様 | うば捨て山 | 金持ちと貧乏人 | 三枚のお札 | サトリの化物 | 貧乏の神 | 馬鹿婿ばなし | 和尚の頭に小便 | 長者婿 | [オ]の字 | 稲のはじまり | あやちゅうちゅう | 人柱 | おぶさりたいの杉の木 | 飽きたの三吉 | 上杉様の鴨とり | 唐辛子売りと柿売り | 沼の貸し膳 | しらみの質入れ | 空巣 | 螺とカラス | カラスと螺の話 | おれの住まいと同じ | 古屋の雨漏り | 塩っぱい爺さん | 猫の宮 | 和尚と水飴 | 緋々退治 | 炭焼き吉次 | お正月 | 石肥三年 | 鳥海山の手長足長 | マムシ小判 | 河童と彦助 | 四本目の足 | 米塚山と糠塚山 | 夢買い彦市 | あこや姫 | 蛙とネズミ | 貧乏長者 | 食わず女房 | 狐の恩返し | 玉虫沼 | お釈迦様と鬼 | 雪女と若者 | 猿のお尻はまっかっか | たぬきと若者 | 水の種 | 娘の百夜まいり | 殿様の一文銭 | 提灯お化け | 竜神の立て札 | ばば皮 | | 片目の爺さまと狐 | 鬼の面 | 笛吹き沼 | もぐらの婿さがし | 平種子柿 | 猿羽根の地蔵様 | きつねの恩返し | べんべこ太郎 | 子産石 | 山姥と名刀 | 猫絵十兵衛 | 半ごろしの御馳走 | 鶴と亀