山形の方言と山形県の温泉や観光情報

山形弁(置賜方言)の昔話と山形県情報。方言で語る昔話で山形を感じよう!


  • 山形弁の訳を見る
  • 昔話通常バージョン
  • 昔話テキストバージョン

『お正月』

 むがし、爺さまど婆さまいだっけど。
貧乏な暮らしだっけげんども、お正月ぐらいは、
油みでな酒呑んで、コッパみでな魚で、雪みでな飯食うべど思ってだったんだど。
んだがら、元日の朝は早ぐ起ぎで、
「水汲め、金汲め、三種の宝汲め」
て言いながらカメさいっぺ水汲んでたんだと。
  そごさ一人のみすぼらしい和尚様が、嗄っちゃ声で
「腹へって動がんにぇぐなった。何が恵んどごやぇ」
て戸ノ口さ倒れ込んできたんだど。
爺さまど婆さまは、お膳みながら、しばらぐ思案してだっけど。
「助けどごやぇ、恵んどごやぇ」
その嗄っちゃ声聞いで、
「ほだなあ、ほんじゃ大した御馳走でもねぇげんども、これ食ってもらうべえ」
ど言って婆さまのお膳の物、全部けっちぇやったんだど。
そして残った爺さまのお膳を二人で仲良ぐ食ったど。
  お正月あ ええもんだ
  油みでな 酒呑んで
  コッパみでな 魚食って
と言いながら二人で寝たんだと。
  そして、次の朝起きてみたらば、
戸ノ口さ大判小判おいであったんだど。
それがらは、爺さまど婆さま、仲良ぐ裕福に暮らしたんだと。
とーびんと。

山形弁訳

『お正月』
  むかし、爺さまと婆さまがいたんだと。
貧乏な暮らしだったんだけれども、お正月くらいは、油のような酒を呑んで、コッパのような魚で、雪のようなご飯を食べようと思ってたんだと。
だから、元日の朝は早く起きて、
「水汲め、金汲め、三種の宝汲め」
て言いながらカメにたくさんの水を汲んでいたんだと。
 そこに一人のみすぼらしい和尚様が、嗄れた声で、
「腹がへって動けなくなった。何か恵んでくれませんか」
て玄関に倒れこんできたんだと。
爺さまと婆さまは、お膳をみながらしばらく思案してたんだと。
「助けてください。恵んでください」
その嗄れた声を聞いて、
「そうだな、それじゃあ大した御馳走でもないが、これを食べてもらおう」
と言って婆さまのお膳の物、全部あげたんだと。
そして残った爺さまのお膳を二人で仲良く食ったんだと。
 お正月ぁ いいもんだ
 油みたいな 酒呑んで
 コッパみたいな 魚食って
と言いながら二人で寝たんだと。
 そして、次の朝起きてみたらば、
戸ノ口に大判小判おいてあったんだと。
それからは、爺さまと婆さま、仲良く裕福に暮らしたんだと。
とーびんと。





○山形弁(置賜方言)の昔話

牛蒡と人参と大根 | 雪女郎 | 百足の医者迎え | 大鳥と大海老と大鯨 | 蛙の恩返し | 蟻と蜂の拾い物 | 金の斧・鉄の斧 | 猫が十二支に入らぬ訳 | 部屋の起こり | 笠地蔵 | 金仏木仏 | 豆腐田楽と和尚さま | 一粒の米 | 猫の釜ぶた | 馬鹿婿と団子 | 飴買い幽霊 | お月様とお日様と雷様 | うば捨て山 | 金持ちと貧乏人 | 三枚のお札 | サトリの化物 | 貧乏の神 | 馬鹿婿ばなし | 和尚の頭に小便 | 長者婿 | [オ]の字 | 稲のはじまり | あやちゅうちゅう | 人柱 | おぶさりたいの杉の木 | 飽きたの三吉 | 上杉様の鴨とり | 唐辛子売りと柿売り | 沼の貸し膳 | しらみの質入れ | 空巣 | 螺とカラス | カラスと螺の話 | おれの住まいと同じ | 古屋の雨漏り | 塩っぱい爺さん | 猫の宮 | 和尚と水飴 | 緋々退治 | 炭焼き吉次 | お正月 | 石肥三年 | 鳥海山の手長足長 | マムシ小判 | 河童と彦助 | 四本目の足 | 米塚山と糠塚山 | 夢買い彦市 | あこや姫 | 蛙とネズミ | 貧乏長者 | 食わず女房 | 狐の恩返し | 玉虫沼 | お釈迦様と鬼 | 雪女と若者 | 猿のお尻はまっかっか | たぬきと若者 | 水の種 | 娘の百夜まいり | 殿様の一文銭 | 提灯お化け | 竜神の立て札 | ばば皮 | | 片目の爺さまと狐 | 鬼の面 | 笛吹き沼 | もぐらの婿さがし | 平種子柿 | 猿羽根の地蔵様 | きつねの恩返し | べんべこ太郎 | 子産石 | 山姥と名刀 | 猫絵十兵衛 | 半ごろしの御馳走 | 鶴と亀