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『鶴と亀』

 むがしむがし、ある屋敷の大っきな池さ亀が甲羅干しする大っきくてきしぇな石あったなだど。
 その池の亀が石の上さ出でくっと、いっつも鶴飛んできて何が喋ってだみでだったなだど。
 屋敷の旦那様は何喋ってたもんだが気になって、ある日隠っちぇ聞いでみだなだど。
 ほしたら、鶴は黙ってだ亀さ向がって、
「おれど一緒になれ」
「首なげな、やんだなが」
「足なげな、やんだなが」
なて言ってだったなだど。
 しばらぐして、亀は首上げで、
「鶴は何年生ぎんなや」
って聞いだなだど。ほしたら
「おれは千年生ぎんなだぁ」
「おれ万年生ぎんなだぞ。おれ九千年も一人で生ぎんなねなて、やんだもなぁ」
って言って、池の中さドボンって潜ってったなだど。

 どーびんと

山形弁訳

『鶴と亀』
 むかしむかし、ある屋敷の大きな池に亀が甲羅干しをする大きくてきれいな石があったのだと。
 その池の亀が石の上に出てくると、いつも鶴が飛んできて、何か喋っているみたいだったのだと。
 屋敷の旦那様は何をしゃべっているのか気になって、ある日隠れて聞いていたのだと。
 そしたら、鶴はたまっている亀に向かって、
「俺と一緒になれ」
「首が長いのが嫌のか」
「足が長いのが嫌なのか」
なんて言っていたのだと。
 しばらくして、亀は首を上げて、
「鶴は何年生きるんだい」
って聞いたのだと。そしたら
「おれは千年生きるんだ」
「おれは万年生きるんだぞ。おれ九千年も一人で生きるなんて、嫌だもんなぁ」
って言って、池の中にドボンって潜って行ったのだと。

 どーびんと。





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