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『牛蒡と人参と大根』
牛蒡と人参と大根で、ある日、旅さ行ったんど。
んで、あるどごさ泊まって、宿の爺さんが、
「風呂さ入っておくやい」
っていうもんだがら、お前入って来い、そなた入って来いて、
「まず、人参、先入って来い」
「ほだが」
なて、人参、先一番に行ったけずも。ほうして、風呂さ行って、
なかなか熱いげんど、水、どっから汲んで埋めるもんだが水
さっぱり見当だんねし、大きい音立てて聞いてるのもと思って、
人参は熱いのを我慢して、じゃぶっと入ってはぁ、
わらわら上がって来た。
「いやいやええ湯だった、まず。次は牛蒡入って来い、まず」
牛蒡、
「ほだが、おれ先入ってくんべ。大根、おれ先に入ってくんぞはぁ」
ほして牛蒡は風呂場さ行って、風呂さ入ったど思ったらば、
いや、熱くて入らんにぇ。
「いや、人参、入んねで、ちとあちこち拭いできて、
赤くなってきたんだな、こりゃ」
ほうして、牛蒡、入りもしねで、そのまま帰って来て、
「いや、ええお湯だった、ええお湯だった。大根入って来い」
「ほだが、ほんじゃ、おれ最後に入れでもらうがはぁ」
なて大根入りに行った。
ほうして行ったらば、煮立つみでに熱いお湯だったもんだがら、
「ははぁ、こりゃ、人参も牛蒡も入ったふりして、
さっぱり入んねがったな。はて、風呂釜近くだもの、
探せば水あんべした」
て、ちょうど戸開けて見だれば、ちっちゃこい川流っでだ。
そっから水汲んできて、
ええ塩梅に埋めで、ゆっくり大根は入って、頭のてっぺんから足の先まで、
きれいに洗ってきたけど。
ほだから、人参は熱いお湯さちょこっと入ったばりで赤ぐなって、
牛蒡は、入ったふりして入んねで、
大根はゆっくり入ったばきれいになったんど。
最初は牛蒡ど同じような色であったげんど、人参も大根も、
それがらそういう風に色が変わってきたんだど。
どーびんと。 |
山形弁訳
『牛蒡と人参と大根』
牛蒡と人参と大根で、ある日、旅に行ったんだと。んであるところに泊まって、宿のじいさんが、
「風呂に入ってください。」
っていうものだから、お前入って来い、そなた入って来いて、
「まず、人参、先入って来い。」
「わかった。」
なんて、人参、先一番に行ったんだと。そして、風呂に行って、なかなか熱いんだけど、水をどこから汲んできて埋めるものなのか、水がさっぱり見当たらないし、大きい音立てて聞いてるのもと思って、人参は熱いのを我慢してじゃぶっと入ってから、
急いで上がってきた。
「いやいや、いいお湯だった、まず。次は牛蒡入って来い。」
牛蒡、
「そうか、おれ先入って来る。大根、おれ先に入ってくるぞ。」
そして牛蒡は風呂場に行って、風呂に入ったと思ったら、いや、熱くては入れない。
「いや、人参、入らないで、ちょっとあちこち拭いてきて、赤くなってきたんだな、こりゃぁ」
そして、牛蒡、入りもしないで、そのまま帰ってきて、
「いや、いいお湯だった、いいお湯だった。大根入って来い。」
「そうか、それじゃあ、おれ最後に入れてもらうかなぁ。」
なんて大根入りに行った。
そして、行ってみたら、煮立つみたいに熱いお湯だったもんだから、
「ははぁ、こりゃ人参も牛蒡も入ったふりして、さっぱり入らなかったんだな。はて、風呂釜の近くなんだから、探せば水があるだろう。」
て、ちょうど戸開けてみたら、ちいさい川が流れてた。そこから水汲んできて、いい塩梅に埋めて、ゆっくり大根は入って、頭のてっぺんから足の先まで、きれいに洗ってきたんだと。
だから、人参は熱いお湯にちょっと入っただけで赤くなって、牛蒡は、入ったふりして入らなくって、大根はゆっくり入ったからきれいになったんだと。
最初は牛蒡と同じような色だったのに、人参も大根も、それからそういうふうに色が変わってきたんだと。
どーびんと。 |