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山形弁(置賜方言)の昔話と山形県情報。方言で語る昔話で山形を感じよう!


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『稲のはじまり』

 ずうっとむがしのごどだど。
人が稲など見だごどねえどぎに、お稲荷様のお使いで、狐ぁ唐の国さ行って、
「稲どいうなの穂貰ってこい、穂どいうなは稲の種だがら、そいづどご大事に貰ってこいよ」て。
  ほうして唐の国さ狐、お使いに行ったなよ。
狐は唐の国がら、その穂っていうな一本貰ってきて、
お稲荷さまんどさ行ぐどしたらば、人に見つかったんだど。
「狐ぁなんかくわえできた。あれなんだべな」
って、人みんながら狐ぁおっかげらっちゃども。
狐ぁ一生懸命走ったそうだげんども、
口さ穂くわえだまんまなもんだがら、
口あがんにぇし、口あがんにぇど息もさんにぇもんだがら、
沼のどさ来たどぎに、一本の穂どご沼の泥の中さ隠して、
ちかぐの葭(よし)一本くわえで切って、その先さ泥付けで、
目印に立ででがら、お稲荷様んどごさ帰ったど。
ほうして、
「人に追っかけらっちぇ、穂貰ってきたんだげんど、こごまで持ってこらんにぇがったがら、途中さ隠しったがら、一緒に行って探しておごやんねが」
て、お稲荷様さ頼んだど。
  お稲荷様ど狐で沼の端まで行ってみだらば、さごって、いっぱい実なってだったど。
「はぁ、これが稲っていうもんだな、こりゃ」
お稲荷様、
「よぐ戻ってきた。お前、よぐこごさ目印の葭棒一本立ででったな」
今では、苗代こしゃった時、苗実の竹だて、真中さ葭棒一本、ちょこんと立でだものがよ。そいづのなごりで立でであったもんだど。
とーびんと。

山形弁訳

『稲のはじまり』
 ずうっと昔のことだと。
人が稲なんて見たことのないときに、お稲荷雅のお使いで、狐は唐の国に行って、
「稲というものの穂を貰って来い、穂というのは稲のたねだから、そいつを大事にもらってくるんだぞ」て。
  ほうして唐の国に狐、お使いに行ったんだと。狐は唐の国から、その穂というもの一本貰ってきて、お稲荷様のところに行こうとしたら、人に見つかったんだと。
「狐が何かくわえていた。あれなんだろうな」
って人みんなに狐は追いかけられたんだそうな。
狐は一生懸命走ったそうだけれども、口に穂くわえたままなものだから、口を開けられないし、口が開けられないから息もできないものだから、沼のところに来たときに、一本の穂を沼の泥の中に隠して、近くの葭(よし)一本くわえて切って、その先に泥を付けて目印に立ててから、お稲荷様のところに帰ったんだと。
ほうして、
「人に追いかけられて、穂を貰ってきたんだけれども、ここまで持ってこれなかったから、途中に隠してきたから、一緒に行って探して遅れませんか」
て、お稲荷様にたのんだんだと。
お稲荷様と狐で沼の端まで行ってみたら、さごって、いっぱい実がなっていたんだと。
「はぁ、これが稲っていうものだな、こりゃ」
お稲荷様、
「よく戻ってきた。お前、よくここに目印の葭棒一本立てておいたな」
今では、苗代拵(こしら)えたとき、苗実の竹だて、真中に葭棒一本、ちょこんと立てたものが、そのときの名残で立てているものなんだと。
とーびんと。





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