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山形弁(置賜方言)の昔話と山形県情報。方言で語る昔話で山形を感じよう!


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『空巣』

 むがしむがし、ある村のおっきい木の下で、二人の若者が、木の上さある鳥の巣のごどで、口喧嘩しったったんだど。
「俺、いっつも見ったげんど、あの巣は、むく鳥の巣だ」
「いやいや、俺も毎日見ったげんど、あの巣は山鳩の巣だ。間違いね」
って喧嘩しったんだっけど。
そごさ、村の和尚様が通りがかった。村一番の学者で、知恵者の和尚様さ、二人は、
「和尚様和尚様、この木の上の鳥の巣は、むく鳥の巣だべっし」
「いや、ほんね、俺ぁ山鳩の巣だど思うなよっし」
と二人が言うど、和尚様は、
「ありゃぁカラスだ」
と、おしぇだんだと。
二人は、カラスの巣だって言わっちゃど思って、カラスの巣でねぇって、ひのずつっていだっけど、
和尚様は、
「んじゃ、どっちが登って見できたらいいんねが」
と言わっちぇ、一人の若者が木さ登って、巣の中、見さ行って、
「何もいねなぁ」
って言ったらば、和尚様は、
「ほだがら、空巣だど言ったべ、俺はカラスの巣だどは言わねがったぞ。
  今の時期は、親鳥も雛鳥もいねなだ。よぐわがんねごどは、人の話も聞がねで、我通すもんでねぇぞ」
  と、よっくど若者さおしぇだんだと。
  とーびんと。

山形弁訳

『飽きたの三吉』
 むかしむかし、ある村の大きな木の下で、二人の若者が、木の上にある鳥の巣のことで、口喧嘩していたんだと。
「俺は、いつも見ているけれども、あの巣は、むく鳥の巣だ」
「いやいや、俺も毎日見ているけれども、あの巣は山鳩の巣だ。間違いない」
って喧嘩していたんだと。
そこに、村の和尚様が通りかかった。和尚様は、村一番の学者で、知恵者の和尚様に、二人は、
「和尚様和尚様、この木の上の鳥の巣は、むく鳥の巣でしょう」
「いや、違う、俺は山鳩の巣だと思っているんですよ」
と二人が言うと、和尚様は、
「おれはカラスだ」
と、教えたんだと。
二人は、カラスの巣だと言われたと思って、カラスの巣じゃないって、強情に言い張ってたんだと。
和尚様に、
「それじゃあ、どちらかが登って見て来たらいいんじゃないか」
と言われて、一人の若者が木に登って、巣の中を見に行って、
「なにもいないなぁ」
って言ったら、和尚様は、
「だから、空巣だと言っただろう、俺はカラスの巣だとは言わなかったぞ。
  今の時期は、親鳥も雛鳥もいないんだ。よく分からないことは、人の話も聞かずに、我を通すものじゃないぞ 」
  と、よおく若者に教えたんだと。
  とーびんと。





○山形弁(置賜方言)の昔話

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